2015年に新宿の小さなライブハウスでチケット代3000円でライブをしていた声優バンドユニットは、そこから2年ちょっとで日本武道館の舞台に辿り着いた。1200人のディファ有明を埋められるか心配していたぼくは、そこから2年弱経って1万人以上の観客のサイリウムが作る光の海の中にいた。
……というエモい感想を書くことになると思っていたのだけど、ちょっと違うかなという気分になった。そういうエモい感想も確かに存在して、まあ結局そういう話も書くんだけど、この日のライブはとにかく楽しくて、でもあっという間で、夢のようなすてきな時間だった。
タイトルには書いたけど本文には何のライブのことかまだ書いてなかった。8/21にあったバンドリの武道館ライブの感想です。エッジラインのレポートがよいレポートでした。副読にどうぞ:
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何が良かったか、そして愛美さんの話
この日のライブで何が良かったか。エモい感傷は勿論あった。アニメを思い出す瞬間もあった。けどそれより何より、ステージの Poppin'Party そして愛美さんがまぶしく輝いていて、それを間近で見て感じることができた喜びが大きくて、単純にライブがめちゃめちゃ楽しかった。正直ぼく自身もっと感動でわんわん泣くかと思っていたけど泣いてる暇なんて無かった。ぼくはこの日南側のアリーナ席だったのだけど、ステージ正面*1から大好きな曲を聞けて、パフォーマンスを見れてすごく良かった。
たとえば最初のときめき〜の開幕で観客を煽るところがかっこよかった、夏色〜の前にこちら(=南側)の観客を煽りに来るところでドキドキした、みたいな一瞬の思い出もあったし、ぼくから見た愛美さんの話でいうとソロで歌ったキャラソンのどきどきSING OUT!の思い出がすごく強い。キャラソンはショートサイズだったんだけど、この1曲ずっとステージ正面にソロで愛美さん1人だけということで、目移り耳移り(?)することなく愛美さんのパフォーマンスを見た。小さいランダムスターを背負って(キャラソンコーナーでは演奏してなかったので後ろに回して担いでいただけだった)歌う姿は、香澄らしい元気があふれ出ていて、また楽しそうにかけ声を煽るところにはいきいきとしたかっこよさがあってとても良かった。香澄のキャラクター性と愛美さんのステージ映えするスタイルは100%オーバーラップする訳ではないんだけど、この日のこの曲ではふたつがバッチリ噛み合っていたと思う。もともと好きだったこの曲がまぶしいステージの思い出でずっともっと好きになった。
エモめの話(1)
もちろん、武道館の場に Poppin'Party が立つことの大きさとか感慨っていうのはずっとあって、たとえば武道館についたときに沢山のファンが集まるところを見た時や物販の様子を見た時に、これは押しも押されぬ人気コンテンツやないか、と改めて思い直して思い出に浸ったりもしていた。2年前のライブの時に物販に300人並んでてびっくりしてたレベルなのに。
当日券まで出ていたので会場そんなに埋まってないのかと思ったら(一部後ろの席を予め潰してたとはいえ)大方埋まっていたのにはびっくりしたし、3rdの物販は開始後すぐくらいにふらっと立ち寄ればほぼ並ばず買えたんだけど、今回20分前くらいに着いたら2-300人くらい?並んでてマジかーという気分だった。3rdあたりから(唐突に)色んなイベントに出るようになったりしたのが効いてきたのだろうか、熱の高まりを感じる・・・とか勝手に思ってた。
BanG_Dream! 4th Live「ようこそ!ぽっぴん☆PARTY!!!!!」に行ってきた話 - 平常運転
日本武道館にライブを見に来たことは何度もあるけれど、センターステージは初めてだった。前述のようにアリーナ席だったんだけど、アリーナから見るセンターステージはやっぱり大きく見えたし、そのままステージの上を見上げると武道館お馴染みの日の丸があって、入ってからも改めてここが武道館か……と再確認するような気持ちだった。やっぱりあの日の丸がどーんと見えると武道館に来た!という気持ちになる。ここでの「来た」は観客である僕が来たというのもあるし、Poppin'Partyがここまで、というのでもある。
ライブの話
先に愛美さんの話をしてしまってからなのもどうかと思うけど、ライブ思い出話をどばーっと書いていく。
ステージ上部の360度モニターがステージのところまで降りてきて3rdライブの時の映像が流れて、そしてときめきエクスペリエンス!で始まったのだけど、いざ始まってしまうとその感傷は興奮に形を一気に変えた。武道館まで辿り着いた特別なライブだ、と気持ちが高まっていたのもあるし、半年ぶりの Poppin'Party のワンマンライブという喜びもあるし、正面すぐそこにステージがあって Poppin'Party がいるというシンプルな喜びもある。さぁ始まるぞ、という歌い出し、ステージの上でキラキラに輝く愛美さんはじめ Poppin'Party のメンバー、そして合いの手/コールなどのインタラクション。テンションがいきなりバーンと跳ね上がってるのが自分ではっきりと分かっておもしろいくらいだった。
1曲目のあとはMCだったんだけど、ここで何を覚えているかというと大橋さんの猫背! 我ながらどうなのかと思うけど、これより後のステージだったりMCではしゃきっとしていた中、最初のこのMCで大橋さんがすごいリラックスしたテンションだったのが面白かったし、日本武道館のセンターステージという環境にも臆さないのはステージ経験豊富な大橋さんらしいなあとちょっと感心したりもした。
センターステージは文字通り武道館のド真ん中だったのだけど、実際最初のときめき〜ではステージ中央部が360度回転する形だったから全方位的だったほか、曲によっては東西北を正面方向にしての演奏もあって、どの方角の席の人もどこかでは正面からステージを見れる構成になっていた。アニメ曲はきらきら星が東、チョココロネが西、スタビが南、キャラソンも人によって出てくる方角が違うという感じ。半面、それぞれの方角の正面以外はスクリーンごしでないと見れなかったかなーという気はして、それはやむなしと思う。ライブビューイングだと見れたのだろうとか、映像化されたらそれで見たいなとか。
Sparklin' PARTY のときはけっこうそれぞれの楽器の生々しいサウンドが感じられる音響だったのだけれど、今回はあまりそういう感じはしなかった。ステージ上の機材は最小限という感じだったし(アンプすらなかったのはびっくりした!)、スピーカーの配置などに依るところもあるのかなーと思ったりした。
そして、これはどこまで席の差でどこから今回特有だったのか切り分けられてはいないけど、下手側の楽器を中心に、小綺麗にまとまった音色ではなく生々しいサウンドで感じられたような気がした。
BanG Dream! 3rd☆LIVE Sparklin’ PARTY 2017! に行ってきた - 平常運転
スタビの後は一旦休憩ということでガルパをプレイする映像の上映で、そこからガルパ衣装にお色直ししたメンバーが登場して光るならへ、という流れだったのだけど、このガルパ衣装がすごく可愛くてよかった。あんまり語るとなんか性癖みたいなのが漏れそうなのでほどほどにしておくけど、これまでのPoppin'Partyのライブ衣装の中でも一番良かった、とこじんてきにはおもいます。
キャラソンはショートサイズだったのはちょっと残念だけど、どれもすごく楽しかった。大塚さんが冒頭で歯ギターしてたのには爆笑してしまったw 愛美さんのソロの話は上の方でした!
アコースティックコーナーはすっかり定番になったけれど、今回は選曲よりも何よりも、センターステージでメンバーが向き合って座って演奏するのがおもしろかった。センターステージで向き合うということは客席には完全に背中を見せてるわけで、なかなか思い切った配置だった。そういえば、Yes! BanG_Dream! をアコースティックで、というのには、これまでずっとバンドリの看板曲だったのだけどこういう形で演奏するのか、演奏してしまうのかとちょっとびっくりしてしまった。まあこれはフラグです。
新曲の話
今回のライブでフル尺初披露の曲もあったけれど、Time Lapse は完全にここが初出しの新曲だった。歌い出しのアカペラ、ギターリフ、拳を突き上げてみんなで歌う前奏、こういう曲の時のスイッチが入ってるボーカルの愛美さん、何もかも格好良くてとにかくとても良かった。完全に曲調がティアドロップスと同じ枠だったので、割を食ってティアドロップスがセットリストから抜けてしまったのは仕方ないねという感じだけど。。9月のシングルの表題曲枠ということで発売が楽しみで仕方が無い。
フル尺/ライブ初披露…といえば、八月のifも忘れてはいけない。OVAでショートサイズは初披露だった曲。大橋さんの歌唱力を愛美さんとのツインボーカルという形で存分に活かしていてすごく良かった。まさに8月、という曲とリンクしたリアルタイム感と武道館ライブのタイミングで歌詞を聴くといろいろ思いにふけるところもあって、 Time Lapse と全然別の方向の良さが溢れていた。
大橋さんと愛美さんのハーモニーだと Sprin'PARTY の一番の宝物をちょっと思い出すけれど、あの素敵なハーモニーをオリジナル曲という形で聞ける、というのはやはり得がたいものだと思う。大橋さん/沙綾はドラム担当なので、いつもこうというわけには勿論いかないけれど。
バラードを、ということで選曲はガルデモの 一番の宝物。直前の3人の盛り上がるノリのいい曲にバラードを続けるのは結構思い切った構成だなぁと思ったけれど、大橋さんの歌声はすごく綺麗で、盛り上がる曲でヒートアップした空気をガラッと変えてしまう力があり、その思い切った構成がしっかりハマっていたと思う。 また、この曲ではその大橋さんの歌声を綺麗なコーラスとしっかりしたアコギで支えていた愛美さんの仕事っぷりもすごく良かった。
BanG Dream! First☆LIVE Sprin’PARTY 2016! に行ってきた - 平常運転
エモめの話(2)
今回ぼくの意識は完全にステージの方にフォーカスしていたので客席のテンションとかトーンはほとんど意識に入っていなかったのだけれど、前へススメ!に関しては、サビの歌詞の見渡す限りに揺れる輝きが 待っている場所を 夢見ているというフレーズをふと思い出して、センターステージを360度取り囲んで揺れるサイリウムの光に、このことか、とはっとする思いをしたのをよく覚えている。
アンコールでの最後の挨拶の話はエモかった。間違いなくエモかったけど、どう言葉にしたもんかなという感じだからエモいと思いましたという事実だけ書いておくことにする。
ああ、そういえば、愛美さんのこの挨拶にはびっくりさせられてしまった。360度囲まれているというところから、可能性が広がっているという解釈に繋げるのは僕には思いつかなかった。
「本当にすごくて、前にも後ろにも横にもバンドリーマーさんがいて、これって私達の歴史そのものだなって、360度囲まれていると、いろんな可能性の道が広がっているんだなと感じています」と、しみじみ。
「BanG Dream! 4th☆LIVE」日本武道館公演開催!Poppin’Partyメンバーら涙のスピーチも【セトリ付】
そうそう。キャラクターコンテンツとしてのバンドリは2015年のブシロードライブあたりでキャラ設定とかを一通りリブートしていたので、どことなく2015年のバンドリは「なかったことではないが、あまり大々的に振り返る物でもない」とでもいうような微妙な感じだなあと思っていた。
今現在、生きているバンドリの情報やコンテンツとしてこの2015年版のバンドリに触れられる機会はこの小説以外にほぼない。今のライブやメディアミックス、そしてもうすぐ始まるアニメや春からのゲームでもきっとこの2015年版のバンドリに出会うことは望めなさそう。
BanG Dream! バンドリ 小説版は2015年版のバンドリの美しいスナップショットである - 平常運転
けど、特にこの日のライブで改めて当然のことを思ったのだけど、リアルのバンドであるPoppin'Partyは当然2015年から連続していて、武道館ライブはそこからの到達点だった。MCであったり振り返る写真であったり。些細なところで言うと、アンコール前の聖地巡礼VTRに映っていた西本さんが、右手に最近のライブグッズのラバーバンドをつけていた一方で、左手に2015年の2ndライブ、「楽器×女子=正義!」のライブグッズのリストバンドをつけていた…というところにも、2015年からの連続という感傷みたいなのを感じてしまった。個人的にそのリストバンドを手に付けてたからお揃いや!とテンション上がっただけではない。
このライブは何のライブだったか
エモめの話という段落の次に今度はポエムである。
何のライブだったか。いや、もちろん Poppin'Party のライブなんだけれど。ライブ当日はあまり深く考えが及ばなかったんだけど、終わってしばらく経ってこの感想を書いてると、当たり前のようなことにやっと考えが至ってきた。
Sparklin' PARTY のときの思い出話をすると、あのときはアニメ放送中なのでアニメを踏まえた演出や選曲をするのかと思ったら意外とそうでもなく、むしろガルパっぽい感じだった……ということがあった。
アニメ放送が始まってからのライブなのでもっとアニメの流れを踏まえたライブになるかと思ったけどあまりそういう流れでなかったのは少し意外*2。
BanG Dream! 3rd☆LIVE Sparklin’ PARTY 2017! に行ってきた - 平常運転
そして逆に、今回はアニメの放送が終わっていて、リアルタイムで展開してるのはガルパの方だったのでガルパを中心にするのかな……と思っていた。しかしよくよく考えると、アニメOPのときめきエクスペリエンスで始め、前半の挿入歌を並べ、前へススメ!と夢みるSunflowerで本編を締め、アンコールも八月のifからアニメEDのキラキラだとか夢だとか……と、要所要所は全部アニメの曲で押さえていたライブだった。勿論全てがアニメフィーチャーだった訳ではないけど。これまでライブで演奏を重ねてきた曲たちは、アニメ挿入歌になったスタビ以外はショートバージョンかアコースティックアレンジで演奏していたところからも、メインのフォーカスがアニメにあったということなんだろう*2。
この日の武道館ライブはリアルのPoppin'Partyにとってひとつの到達点で、そこに併走してきたキャラクター達のストーリーは何だったかと考えると、アニメの物語はこの場所に持ち込まれるべき、ということだったのだなぁと思った。リアルのPoppin'Partyのライブクライマックスに歩調、テンションを合わせるのはアニメのPoppin'Partyのクライマックスの2曲になるというのは道理という気がする。
ライブは終わって、そして続いて、変わっていく
アコースティックのコーナーで言及したように今回 Yes! BanG_Dream!! はアコースティックバージョンだったんだけど、ライブが終わって最後のクロージングのBGMがこの曲の原曲だった。コール、そして合唱する客席のトーンに乗っかるように、スクリーンがステージを覆ってライブが終わっていくのを惜しむように愛美さんも一緒に歌ってるところは、最後の最後まで楽しさが体を包む体験だった。
今回のライブはすごく楽しくて、そして本当にあっという間で、ぎゅっと凝縮された時間だった。
この感想を書く前にちょっと懐かしくて Starrin' PARTY のライブ映像を見てたりしたんだけど、キャストさんとコンテンツと取り巻くファン/人気という3変数全部がどんどん変化して広がっていった2年半、あるいは1年半だったんだなぁと思う。今までのライブを仮にいま再演しても当時と同じライブには絶対にならない。この武道館ライブっていう一つのおおきな到達点があって、この先また Poppin'Party は色々展開していくだろう(&いってほしい)と思っているけれど、武道館後の Poppin'Party はまた今までと違った世界を広げて、見せてくれるのだなあと楽しみでもある。
感想はこのへんで。なかなか書き進まない下書きを長い間溜めていたからさらっと書いてしまおうと思っていたけど、いざ筆が進み出すとえらい量になってしまった……